本研究では流水式紫外線照射装置の照射量測定を迅速かつ簡便に測定する化学線量計を検討した.水道水と同レベルの高透過率条件下で行うため低濃度で変化量を高感度に測定できる蛍光強度測定と蛍光増白剤を利用した.また濃度変化を促進させる方法として光触媒を用いた系も検討した.また多波長ランプの波長光による影響を調べるために,消毒効果の波長依存性についても検討した.結果として,蛍光増白剤FBA-1 を用いて不活性部分を持つ一次反応と仮定できることがわかった。光触媒剤添加の系においては高透過率条件下では反応速度促進が見られなかったため光触媒無しで検討することとした.FBA-1の光化学反応に濃度依存性,紫外線強度依存性が無いことを確認し,FBA-1 の反応速度定数107 mJ/cm2を得た。さらに装置内の紫外線強度分布について,拡散光モデルを基にしてシミュレートし,かつ装置内を層流を仮定した場合の速度分布式を適用することによって,照射量分布のシミュレーション結果を得ることができた.このシミュレーション結果から生物線量計とFBA-1 の流水式装置における反応率を推定することができ,算定結果と実験結果とを比較した結果、3つの異なる滞留時間における照射量の算定には誤差2割程度であるが,把握できた.このことから高透過率の化学線量計溶液は,紫外線装置の照射量測定方法として充分適用できると考えられた。また消毒効果の波長依存性については短波長域での効果が高いことがわかったが,実用的な紫外線ランプの波長毎の照射強度を加味すれば,影響が少ないことが推定され,今回の蛍光増白剤を用いた線量計測定法は,多波長光のランプにも適用できると考えられた.今後はより蛍光測定結果のばらつきが小さく紫外線反応率も高い化学物質の探索が課題であることが示唆された.
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