研究課題
今年度は、1)環境管理手法としての開発権取引の提案、2)大都市圏における開発権取引の影響分析手法の開発の2つを実施した。まず、1)環境管理手法としての開発権取引の提案については、主に文献調査に基づき、開発権取引に関する既存研究とその適用事例について整理を行った。特に、クリチバ(ブラジル)における緑地保全のための開発権取引について情報収集を行った。また、これらの事例を参考にしながら、今後、人口減少が予想される日本では都市圏内の土地利用マネージメントの強化が必要であること、しかし、適切な土地利用規制を実施しないと経済効率性が大きく損なわれる可能性も秘めていること、こうした問題を克服するためには開発権取引をはじめとする経済的手法の導入についても検討していく必要があること等を明らかにした。他方、2)大都市圏における開発権取引の影響分析手法の開発については、上述の内容を定量的に明らかにする新しい土地利用モデルの開発を行った。従来、都市内土地利用モデルの開発にはロジットモデルが用いられてきたが、本研究では応用一般均衡モデルで用いられるCES型関数を用いた土地利用モデルの開発を行った。このCES型土地利用モデルはCES型効用関数を仮定した消費行動と効用の確率変動を仮定した居住地選択行動から導入されると同時に、2階層の層化CES型効用関数を仮定したマクロな効用最大化問題からも導入できる。また、このCES型土地利用モデルに開発権取引を組み込んだ新しい土地利用モデルを開発した。この土地利用モデルを用いると、開発権取引の導入に伴う影響の大きさを等価変分や補償変分を用いて比較的に容易に評価することができる。
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土木学会論文集G
巻: 66(2) ページ: 75-84