昨年度までの研究成果を踏まえ、最終年度にあたる今年度は、開発権取引の課題を解決するための方策として、開発権取引を導入すると同時に、1)都市鉄道や、2)都市間鉄道への投資を行うことが如何なる効果を発揮するのかについて計量分析を行った。まず、1)開発権取引と鉄道投資の組合せの効果分析では、初年度に開発した開発権取引の評価モデルと、昨年度に開発した都市鉄道投資の評価モデルを組合せて用いることにより、開発権取引の導入と都市鉄道への投資が都市の土地利用に与える影響について分析することを可能にした。そして、名古屋都市圏を対象にしたシミュレーションの結果、開発権取引の導入だけでは都市住民の効用が低下するものの、都心部における地下鉄投資と組合せることによって効用の低下を抑えることができること、両者の組合せは都市のコンパクト化に有効であることなどを明らかにした。また、2)開発権取引と都市間鉄道投資の組合せの効果分析では、初年度に開発した開発権取引の評価モデルと、今年度に開発した都市間鉄道の評価モデルを組合せて用いることにより、開発権取引の導入と都市間鉄道への投資が都市のコンパクト化に与える影響について分析することを可能にした。そして、名古屋都市圏を対象にしたシミュレーションの結果、リニア中央新幹線の開業はこれに接続する駅周辺のポテンシャルを高めること、リニア中央新幹線とあわせて開発権取引を導入することは名古屋都市圏のコンパクト化に有効であることなどが明らかになった。
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