研究概要 |
塩化物イオンがオゾンの溶解および消費特性に与える影響,ならびに有機物の分解特性に与える影響を把握することを目的として,塩化物イオン濃度が0~200g/Lで,有機物としてギ酸,酢酸あるいは1,4-ジオキサンを含む人工試水を対象としたオゾンおよびオゾン促進酸化実験を行った。オゾンとの反応性が比較的小さい物質として酢酸ナトリウムを,大きい物質としてギ酸ナトリウムを対象物質として選定した.また,1,4-ジオキサンは,世界がん研究機関(IARC)によりグループ2B(ヒトに対する発がん性が疑われるグループ)に分類され,廃棄物埋立地の浸出水中に高頻度,高濃度で検出される物質である.オゾン吸収のための反応器は,ガラス製のガス洗浄瓶を加工したもので,底部に孔径が100~120μmの散気板を有し,断面積が52cm^2および有効水深が21cmで有効容積が1.1Lのものを用いた.塩化物イオンが高濃度で含まれる試水に対してオゾン処理を行うと,次亜塩素酸等の酸化剤が生成し,インジゴを脱色してしまうことから,溶存オゾン濃度の測定には,Acid Chrome Violet K (ACVK)法も併用した.ACVK法においては,次亜塩素酸(イオン)が1100mgCl_2/Lまでは,妨害が見られなかった.塩化物イオン濃度が20g/Lを超えると,オゾン単独処理およびオゾン促進酸化処理ともに,気液分配係数のm値が低下し,オゾンガスの水中への移動量が減少した.そのため,ギ酸,酢酸および1,4-ジオキサンの分解効率が低下することが明らかとなった.以上のことから,高塩化物イオン含有水のオゾン処理では,m値を上昇させること,ならびに塩化物イオンとオゾンあるいはHO・の反応に優先させて目的物と反応させる工夫が必要であると考えられた.
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