研究概要 |
本研究の目的は微量有害化学物質のひとつであるPAHsを対象として,コンポスト製造プロセスにおけるPAHsの消長を調査により明らかにし,また反応プロセスでの生物分解性を分子生物学的手法により明らかにすることである.そしてそれらの結果に基づいてPAHsの環境動態におけるコンポスト経由の負荷,特に下流域の水環境に対する流出負荷に対する寄与を明らかにする.本年度は広島県内の代表的なコンポストプラントに協力のもと,通年調査を開始した.通年調査においてサンプリングはH21年度後半から,今年度末まで継続的に実施した.受け入れている汚泥は2/3が下水汚泥で,1/3は食品残渣である.汚泥の境内の滞在期間は20週間である.異なる受け入れ先の汚泥を混合しており,混合状態でのサンプリングは困難であるために個別にサンプリングを実施し,受入量の情報に基づき計算上の混合状態を算定する予定である.サンプリングは原則月1回実施した.今年度は抽出法の検討と,サンプルの特性に合わせた分離測定法の最適化を実施した.主要な対象物となるPAHsの測定を行った結果,コンポスティングによって有意な減少を見いだした.またその減少率は物質によって異なるものの平均的には一般有機物と同程度の減少であり,コンポスティングプロセスによりPAHsは分解すると言える.今後は総括的なリスク評価を可能にすることを目的として,複数の毒性試験を実施して行きたいと考えている.実施を検討している毒性試験は発光微生物毒性試験,AhR反応性,変異原性試験(umu test)である.これらの毒性評価を組み合わせることによってPAHsの分解に伴いリスクの低減が実際に起きているかを検討していくことが今後の課題のひとつとなる.
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