研究概要 |
廃棄物の処理や保管中に死傷事故に繋がるような有害ガスとしては,水素,メタン,二硫化炭素,硫化水素などがあった。またガス(気体)の発生状況を把握するような試験法としては,建材からの揮発性有機化合物の発生挙動を把握するJIS試験法,飛灰からの水素ガス発生を予測する試験法,消防法において水との接触による有害ガス発生を把握する判定方法などがあることが確認できた。廃棄物処理過程における有害ガスの発生事象として,今年度は,都市ごみの焼却飛灰,溶融飛灰のキレート薬剤処理時の二硫化炭素の発生現象について検討した。わが国で採取された数種の飛灰と,国内で市販されている複数のキレート薬剤を検討試料とした。簡易試験としては,三角フラスコとガス検知管を組み合わせた試験系を用意し,飛灰の混練時および混練後静置している期間における二硫化炭素の発生現象を調査した。湿式の排ガス処理を採用している一部の溶融飛灰では,飛灰自身のpHが低いことから,飛灰処理時に低pHとなり,二硫化炭素が発生することが確認された。また通常の温度では二硫化炭素の発生は顕著ではなかったが,周辺温度が60度以上になると,二硫化炭素の発生が顕著となることが分かった。また飛灰に対して過剰にキレート剤を添加した場合により多くの二硫化炭素が発生したことから,適量のキレート薬剤を用いて安定化処理することの重要性が示された。また,三角フラスコを72時間加温したところ,時間経過とともに二硫化炭素濃度が増加する飛灰もあれば,一旦発生したガスの濃度が低下する飛灰もあったことから,来年度以隆,経時的な発生挙動について,飛灰の化学性状とも関連させて丁寧に検討していく必要がある。
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