研究概要 |
膜分離活性汚泥法において、膜細孔内へ侵入するEPSの挙動を解明することを目的に、抽出することなくファウリングを起こした膜を直接、蛍光X線分析(XRF)および赤外分光装置(FT-IR)によるる分析する手法の確認を試みた.PTFE膜をエタノールに1分間浸漬後,純水250mlのろ過を行い,膜洗浄の後に膜そのもののろ過抵抗を求め,これを用いて汚泥のろ過を行った.一度に20ml以上の汚泥をろ過するとケーキ層が形成されてしまい,ろ過が困難になるため,10mlろ過するごとにキムワイプで膜表面に形成された汚泥ケーキ層の除去を行い,より多い量の汚泥のろ過を行った.汚泥ろ過後,膜表面の堆積物を膜面が浸るように5mlの純水を垂らしながらキムワイプにより全面を一定の力で擦るようにふき取り,純水25mlのろ過を行い,ろ過抵抗の算出を行った.その後,110℃で24時間乾燥させ,XRF,FT-IRによる分析を行った.なお,汚泥のろ過後に膜表面をキムワイプで擦り取った状態は,膜表面上には堆積物はない状態であり,膜細孔内への侵入物質のみが存在する状態と考えた. 実験結果より以下の知見を得た。 (1)膜細孔内に,タンパク質第II級アミド特有のピーク,多糖類のピークを確認することができ,膜細孔内へEPSの侵入が示唆された.また,膜細孔内への侵入物質には,C,O,N,Al,Si,P,S,K,Ca,Feが含まれていた. (2)膜の不可逆的ファウリングによるろ過抵抗の上昇にともない,S,Cの含有率が増加する傾向が示され,たんぱく質などで構成されるEPSの進入が示唆された.また,多糖類に特有のFT-IRのピーク高さの上昇も示され,多糖類の細孔内への浸入が確認された。 (3)ファウリングを起こした膜を直接XRFおよびFT-IRにより分析する手法を確立し、実際のMBRリアクターにおけるファウリング物質(EPS)の挙動を調査する手法を提案することができた。
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