膜分離法を利用した生物学的排水処理システムにおける膜ファウリングメカニズムを解明し、リアクターの最適設計手法の確立のための基礎的知見を得ることを目的とする。膜面および膜孔内に蓄積した膜目詰まり物質である菌体外ポリマー(EPS)は運転に伴ってその量及び質的変化が起こるが、これを計測する目的で、フッ素系MF膜モデルメンブレンとして用いて蛍光X線分析による元素組成の定量分析を行う手法を開発を目指した。さらに、膜面の洗浄力として最も支配的な気泡流による物理的な洗浄力を数値流体力学(CFD)を用いて定量化する手法を開発し、リアクター内の混合液-膜表面-膜孔内系におけるEPSの量・質的変化の統合モデル化の検討を行った。主な研究成果は以下の通りである。 膜細孔内のEPSを膜から抽出することなく直接測定する手法の検討し、組成がCとFのみであるPTFE膜(孔径0.5マイクロメートル)に活性汚泥をろ過し、膜表面をふき取って細孔内の不可逆的ファウリングのみが発生している膜に対して、XRFおよびFT-IR分析を行った。また、サンプル膜は同時にろ過抵抗を測定しろ過抵抗と細孔内の各元素の存在量およびFT-IRスペクトルにおける多糖類またはタンパクに特徴的なピークの高さとの関係をしらべた。その結果、細孔内ファウリング物質の指標として、硫黄濃度およびタンパクに特徴的なピーク高さが適切であることがわかった。 CFDにより気泡流に起因する膜面せん断力の計算手法を確立し、ばっ気風量、有機物負荷量などとファウリングの進行速度との関係をシミュレートすることができた。さらに実験室規模のMBRリアクターにおける膜間差圧上昇データを用いて、開発したモデル中のパラメータの妥当性を示すことができた。
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