本研究は、里山を対象として、供給サービス(木材、食料)、調整サービス(大気・水循環調整)、文化サービス(レクリエーション、景観)、基盤サービス(生物生息地)の各生態系サービスを流域スケールで評価し、複数の将来シナリオのもとで生態系サービスが今後どう変化しうるかを政策立案者や地域住民に対して定量的・空間的・視覚的に伝え、協働を支援する対話型シナリオ分析ツール開発を行うものである。平成24年度の研究成果は以下のとおりである。 (1) 里山の将来シナリオに基づく基本フレームの定量化と地域景観の可視化: 前年度に引き続き、日本の里山里海生態系評価において作成された4つの将来シナリオを踏まえ、各シナリオのストーリーラインの記述の詳細化、それに基づく人口、経済成長、土地利用、技術、生産・消費様式の基本フレーム変量の定量化と精緻化を行った。 (2) 将来シナリオに応じた里山の生態系サービスの評価: 上記(1)の将来シナリオごとの基本フレーム設定と生態系サービスの変化を関連づけて予測する評価サブモデルを開発し、2050 年までの変化を定量的に予測するモデルのプロトタイプを構築した。さらに、東日本大震災による生態系サービスへの影響を定量的に明らかにするととに、全国の原発立地地域において同様の過酷事故が生じた場合での生態系サービスへの影響を明らかにした。 (3)政策オプションの対話型探索: 将来シナリオに応じた生態系サービスの今後の変化の定量化と可視化にあたり、各将来シナリオの仮説やそこに組み込む政策について専門家間で討議を行い、有効な政策オプションを探索するための検索システムのプロトタイプを開発した。対策には、負の生態系サービスである鳥獣害への対策も含まれる。 (4) 研究対象流域の里山におけるフィールド調査: 上記(1)から(3)の遂行のため、東北、関東、近畿地方において現地調査を行った。
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