研究概要 |
本研究の目的は,既存超高層鉄筋コンクリート造(RC造)建築物の保有耐震性能を評価し,耐震対策として有望な制振補強効果を考察することである。本研究の期間は3年間を計画しており,「(A)保有耐震性能指標の解析」,「(B)制振補強効果の評価」の2段階に分けて実施する。初年度である本年度は,研究計画に基づき「(A)保有耐震性能指標の解析」として,「(A1)既存建築物モデルの構築」を実施し,さらに「(A2)既存建築物モデルの保有耐震性能指標の算定」に取り組んだ。 (A1)では,既存超高層RC造の研究調査に基づき,設計時期による構造特性の違いを考慮した既存建築物モデルを構築した。まず,約35年間に設計された既存の超高層RC造建築物約500棟を対象として,その設計データから設計時期における構造特性を分析した。その分析結果に基づき,既存建築物モデルは3つの年代に分けて構築した。第1年代は1989年まで,第2年代は1990年から1999年まで,第3年代は2000年以降とした。既存建築物モデルには,研究調査及び設計実績に基づき,各年代における使用材料,骨組形状,固有周期及び設計用地震力などの構造特性を反映して骨組形状や部材の復元力特性を設定した。具体的には,高さの異なる建築物について3つの年代を代表する骨組モデル(材料,形状)を設定し,適切に既存建築物フレーム群を設定した。これらの既存建築物モデルの妥当性は,骨組モデルを用いた既往波などによる地震応答解析を実施し,解析結果を各年代の既存超高層RC造の設計データと比較対応することにより,検証した。 次に,(A2)では,骨組モデルに対して地震動の強さを変えたパラメトリック非線形地震応答解析を実施して,修復限界指標及び安全限界指標の算定に着手した。部材の弾塑性性状を適切にモデル化した既存建築物モデルを用いた非線形フレーム地震応答解析を行った。これらの解析は,引き続き次年度に実施する予定である。
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