研究課題
鋼構造部材の耐力と変形能力に関する統計量を整理し,限界状態設計に応用できるような定式化を行った.また,実構造物を対象とした調査で相関係数マトリクスを明らかにし,その結果に基づいて骨組性能への影響を明らかにした.さらに,有限要素法を用いた数値解析と2次元フレームの弾塑性時刻歴応答解析を行い,所定のCOFに対して終局限界状態まで想定した崩壊メカニズムを維持するための部材の必要変形性能を定量的に提示した.本研究の成果は下記の3点である.[1]降伏応力度と降伏比の変動性と相関性 終局限界状態の評価に必要な部材の荷重変形関係を大変形領域まで含めて確率論的に評価するため,従来は降伏応力度に限られていた素材特性の不確定量を降伏比や歪硬化開始点の歪などにも拡張し,有限要素法に基づく非線形数値解析手法によって大変形領域に至る鋼構造梁部材の挙動における変動性を明らかにした.[2] 部材耐力間の統計的相関性 鉄骨加工工場から施工現場に至る鋼材の流れをミルシートと対応させて追跡する調査を行い,部材耐力の不確定な変動を考慮する場合の統計的相関性を明らかにした.また,部材耐力間の統計的な相関性が骨組終局耐力に与える影響を数値解析に基づいて検討し,骨組安全性評価における部材耐力間の相関性の考え方を整理した.[3] 終局限界状態に至るまで骨組安定性を確保するための部材の必要変形性能 降伏応力度や降伏比の変動性を考慮した部材の荷重変形関係の成果を受け,これらを用いた骨組の終局限界状態までの数値解析を実施し,与えられたCOFに対して骨組が終局限界状態まで想定した崩壊メカニズムを維持するための条件を系統的に整理した.また,柱梁耐力比を規定する本来の目的である骨組のエネルギー吸収量に着目し,部材耐力が変動した場合の骨組のエネルギー吸収能力の確率分布を推定する手法を提案し,それに基づいた目標COFを提示した.
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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日本建築学会構造系論文集
巻: Vol.78,No.681 ページ: 1791,1800