研究概要 |
1,400年以上の歴史を持つ瓦屋根はこれまで,多くの先人達の知恵と工夫が経験的に蓄積,継承され,今日の形状デザインや施工方法等に結実している.しかし,近年の建築基準法でも風速を単純に圧力に換算した静的な引張試験のみで耐風性能が評価され,例えば,瓦の外形に起因する流体抵抗や揚力などの流体力学的な要因は全く考慮されてはいない.本研究では,このように従来考慮されてこなかった動的な視点,すなわち,瓦が風の影響を受けて飛散する前兆現象に現れる振動に着目することにより,振動発生の原因を探求して有効な防災対策に反映させようとするものである.具体的には,従来の建築基準法及び荷重指針に示されている耐風基準を見直し,加速度センサーを用いて瓦の耐風設計や耐風性能評価基準などを確立することを目的としている. 平成24年度では,平成16~23年度に明らかとなった加速度センサーを用いて得られた風力の変動成分から口開けが生ずる直前の風力を算定し,新たな耐風基準を提示して施工方法の改善等に反映することを目的としている.加速度センサーを用いて得られたデータから精査された耐風設計や耐風性能の評価を行い,従来得られている実験データの信頼性や精度を再度見直し,評価式に反映出来るか否かの仕分け作業を行った.また,防災瓦の開発や施工方法の改善に求められる要因を分析し,その結果,瓦形状や施工方法を幾つか提案することが出来た.すなわち,瓦の浮き上がりは幅方向または長さ方向の回転によるものがほとんどであるため,瓦の浮き上がり流速を遅らせ回転を抑える方策が必要である.例えば,①瓦の重なりからの流れ込みを防ぐための形状を加える,②瓦の幅方向のカーブに回転止めの形状を加える,③瓦の流れ方向の回転を防ぐために,現状の引っ掛けを大きくし,さらに桟木を挟む位置に新しい形状を加える,④瓦の重心位置を瓦左下端に片寄らせる,等である.
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