研究概要 |
本研究では,防災安全上および環境保全上の課題の解決を目指し,間伐材を用いた面格子壁の力学性能とその経年変化(劣化性状)を,成木材を用いた面格子壁との比較実験により明らかにすることを目的とする.面格子壁の試験体寸法は幅910mm×高さ2730mmとし,使用材料2種類(成木材あるいは間伐材),格子材寸法2種類(太径あるいは細径)の合計4種類用意する.なお,太径は60mm×60mm,細径は45mm×60mmの格子材を用いている. 平成23年度は,平成22年度に製作した試験体24体の内,製作後12か月経過した試験体4種類8体について水平加力実験を行った.実験は,一般的な面内せん断試験方法に従って実施し,各試験体の強度(耐力)・剛性を計測した.いずれの仕様の面格子壁も,製作後12か月経過した試験体の方が,製作直後の試験体に比べて強度・剛性がやや高い結果となった.この理由は現在のところ不明であるが,今年度および過去の様々な面格子壁の水平加力実験データから,製作後12か月程度以下の経年数ならば,使用材種(間伐材あるいは成木材)や格子寸法(太径あるいは細径)に関わらず,面格子壁の力学性能は,少なくとも製作直後の試験体と同程度であることが明らかとなった.このことは,これまであまり利用価値のなかった小径間伐材の需要拡大につながると考えられる. さらに,実験から得られた荷重-変形関係の包絡線を基に,小変形(せん断変形角1/200rad)時の荷重値を利用したトリリニア型の弾塑性復元力特性モデルを提案し,このモデルが実験結果と概ね良い対応(安全側の復元力特性)を示していることを確認した.
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今後の研究の推進方策 |
各試験体について水平加力試験を継続し,製作後24か月まで経過した試験体の力学性能について調査する.また,せん断変形角1/200rad時の荷重値を利用したトリリニア型の弾塑性復元力特性モデルを提案しているが,このモデルは安全側の評価であるものの,実験値との誤差がやや大きい試験体もある.実際の設計に利用するためには,モデルの推定精度を向上させる必要もある.
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