本研究では,間伐材を用いた面格子壁の力学性能とその経年変化(劣化性状)を,成木材を用いた面格子壁との比較実験により明らかにすることを目的とする.面格子壁の試験体寸法は幅910mm×高さ2730mmとし,使用材料2種類(成木材あるいは間伐材),格子材寸法2種類(太径あるいは細径)の合計4種類用意する.なお,太径は60mm×60mm,細径は45mm×60mmの格子材を用いている.平成24年度は,平成22年度に製作した試験体24体の内,製作後18か月および24か月経過した試験体について水平加力実験を行った.実験は,一般的な面内せん断試験方法に従って実施し,各試験体の強度(耐力)・剛性を計測した. これまで3か年の実験結果から,細径(成木材・間伐材)では,24ヶ月まで時間が経過するほど耐力が若干増加するが,太径(成木材・間伐材)では,24ヶ月までの経過によって耐力がやや低下することが確認された.しかしながら,耐力の増減はいずれも2割程度以下であり,製作後24ヶ月までならば,荷重-せん断変形角関係の大きな変化はないことが明らかとなった.すなわち,製作後24か月程度以下の経年数ならば,使用材種(間伐材あるいは成木材)や格子寸法(太径あるいは細径)に関わらず,面格子壁の力学性能は,少なくとも製作直後の試験体と同程度であることを示唆している.このことは,これまであまり利用価値のなかった小径間伐材の需要拡大につながると考えられる. また,実験から得られた荷重-変形関係の包絡線を基に,小変形(せん断変形角1/200 rad)時の荷重値を利用したトリリニア型の弾塑性復元力特性モデルを,除荷過程の戻り剛性も含めた形で提案した.さらに,面格子壁を設置した木造建物モデルの限界耐力計算を行い,構造用合板や土壁などよりも応答変位が小さくなることを確認した.
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