研究概要 |
本研究は,テンション材と小径木丸棒を用いた単層2方向格子シェルのようなハイブリッド格子シェルを対象としている。 ハイブリッド格子シェルの数値解析的研究としては,テンション材を格子対角に配置し,小径木丸棒を用いた屋根型円筒単層2方向格子シエルを対象とし,部材半開角,初期不整分布形,初期軸力をパラメータとした離散的取扱い法による座屈荷重解析結果から,座屈荷重と形状初期不整,テンション材の初期軸力,アーチ半開角の関係を示し,本研究で提案した座屈荷重低減係数で形状初期不整の効果を論じた。なお,形状初期不整は,屋根型シリンダーを対象とし,Formianに新しい関数を導入して与えている。 ハイブリッド格子シェルの実験的研究としては,既往の実験的研究から,ドームの境界条件,ドーム半開角,テンション材の初期軸力を変化させた矩形平面の推動曲面単層2方向格子ドームの中央集中載荷実験を行なった。今回のドーム試験体では,格子部材と格子面外テンション材とが接合部において干渉すること,試験体製作の効率を考慮し,テンション材は格子対角のみに配置している。ドームは母線,推動曲線が半開角35度の円弧,スパン4mであり,格子部材は桧の小径木丸棒,テンション材にPC鋼棒を用いる。試験体の支持条件は,4隅ピン支持である。テンション材の初期軸力設定値を12kNとしてPC鋼棒部材を製作する。PC部材,格子部材の製作部材長さを精度よく管理すれば初期軸力設定値から実際に導入される初期軸力を工学的に有意な精度で推定可能であることが確認できた。初期軸力がほぼ零の場合に比べて,初期軸力の設定値が12kNの場合には,座屈荷重が増加とともに座屈モードが節点座屈から個材座屈に変化することを明らかにした。さらに,離散的取扱い法による数値解析より,2方向格子ドームの載荷実験の荷重変形性状推定が可能なことを示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
テンション材を格子対角に配置し,格子部材に小径木丸棒を採用した単層2方向格子シェルのようなハイブリッド格子シェルを対象とし,テンション材の配置形式と組み合わせに着目し,構造特性の基礎資料を得るとともに構造設計法を提案することを目的としている。シェルの形状,テンション材の配置形式と組み合わせに関する実験的研究,並びに数値解析的研究について,2010,2011年度は屋根型円筒,推動曲面ドームを対象として初期軸力,荷重分布形を変数として行っている。屋根型円筒格子シェルの座屈荷重に及ぼす初期不整の効果について数値解析研究で基礎資料を蓄積している。テンセグリティ基本ユニットからなる格子シェルの構造特性資料の蓄積検討が必要である。
|
今後の研究の推進方策 |
格子シェルの形状,テンション材の配置形式(格子面内,格子面外),組み合わせに着目し,施工性に配慮しつつ,初期不整,テンション材の初期軸力を考慮した数値解析的研究を行い座屈荷重などの基礎資料を得る。これまでに得られた成果からハイブリット格子シェルの構造設計法を提案し,提案設計法による格子シェルの載荷実験を行い,有効性を示す。
|