研究概要 |
本年度は,大きく分けて2つのテーマについて実験検討を行った。一つは,再生樹脂シートの品質のなかでも課題となる耐久性に関するものである。耐久性の把握と品質向上を目的に,タイルカーペット,壁紙,防水シートの3種類の塩ビ廃材由来の再生塩ビ粉体について,ヴァージン材の混入率(0,20,40,60,80,100%)を実験因子とし,再生樹脂シート試験体を作製して,促進劣化処理(熱劣化および耐候性試験)を行い,その後の強度・伸び率を測定した。 もう一つは,最終目的である製品化を目指し,再生樹脂シートの積層化について,基礎的な実験を行った。本年度は,積層化にあたり,プレス機の温度,圧力およびそれらの時間を変動因子として,複合シートを作製し,引張り強度および伸び率を測定することで,最適な製造方法を求めた。その製造方法を利用し,ヴァージン材と再生塩ビ粉体の配合比率および再生塩ビ粉体の種類を変動させて,複合シートを作製したものの品質確認実験を行った。 本年度の実験検討の結果から得られた成果をまとめると以下のとおりである。 ・塩ビ廃材種類ごとに再生樹脂シートの原料として,JIS規格の品質を満たす配合割合は異なるが,おおむねリサイクル率40~60%程度である。 ・再生樹脂シートの品質は,加熱期間の増加に伴い,質量減少量は増加し,引張強さ比は向上,伸び率比は低下する傾向がある。 ・その原因として,再生樹脂シートの組成成分の一つである可塑剤の減少が強く影響したためと考えられ,その可塑剤の減少量により品質の予測が可能と考えられる。 ・しかし,今回の研究では,再生樹脂シートの劣化傾向が微少であり,明確な傾向の把握には至らなかった。そこで今後の課題として,加熱促進期間を大幅に伸ばし,品質への明確な劣化傾向の把握が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
再生樹脂シートの耐久性に及ぼす各種要因の影響を明らかにしたデータを取得できたことから,次に耐久性を確保するための配合設計方法について検討を進める。これまでに得られた配合のなかから,所要の品質を有し,かつリサイクル率の高い再生樹脂シートについて,シートの厚みを具体的な製品と同様にして,性能評価を実施する。 また,製品化に際しては,樹脂シートを積層構造とすることで,耐久性をはじめとした品質向上を図る。今後は,ヴァージンシートと再生樹脂シートを積層加工した製品シートを作製し,その性能評価を行い,そのデータを学会等で公表することで,関連業界に周知し,研究推進していく。
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