本年度は,最終目的である製品化を目指し,再生樹脂シートの積層化について実験・検討を行った。再生樹脂シートおよびヴァージンシートに繊維補強シートを組み合わせた積層構造の製品試作を行った。まず,製品試作に必要な積層化方法として,プレス機の温度,圧力およびそれらの時間を変動因子として,繊維補強複合シートを作製し,引張り強度および伸び率を測定することで,最適な製造方法を求めた。また,その製造方法を利用し,ヴァージン材と再生塩ビ粉体の配合比率および再生塩ビ粉体の種類を変動させて,品質確認実験を行った。 また,再生樹脂シートの耐久性に関する3年間の実験結果をとりまとめ,塩ビ廃材の種類およびリサイクル率が耐久性に及ぼす影響について分析を行った。 本年度の実験検討の結果から得られた成果をまとめると以下のとおりである。 1)積層構造化における複層シート接着の適切な条件は,温度110℃,圧力3N/ cm2,時間5分であった。2)この条件のもとシートの複層化を行ったところ,単層シートと同等の引張強さと伸び率が,ほとんどの水準で確認できた。3)ただし,繊維シートがある場合は,無い場合に比べてシート間に空気層が存在することがあり,そのときには品質が低下する可能性も確認できた。4)繊維樹脂シートの複層化に向けて,空気の巻き込み防止など,製造方法に改善の余地がある。5)3年間の実験結果をまとめ,塩ビ廃材の種類およびリサイクル率が耐久性に及ぼす影響を塩ビポリマー,可塑剤,充填材の3つの成分比率から求める方法を提案した。 これらの事から,廃塩ビ建材の種類に応じた再生樹脂シートのリサイクルが可能となり,ひいては混合廃棄物の削減に資する技術開発が行えた。ただし,複層化や経年劣化した廃材のリサイクル手法についてはさらなる検討が必要である。
|