研究概要 |
本年度は,有害物質除去と再資源化を考慮した適切な木造戸建て住宅の解体手法に関する検討を目的に,実際に業務を行っている解体リサイクルシステム協同組合協力の下で,解体実験・調査を行った。実験・調査の対象は,築30年程度の木造戸建て住宅2棟とした。それぞれ,解体工事現場に調査員が常駐し,解体工事人工,解体方法,廃棄物発生量等を記録し,その結果から,具体的な解体工事の周辺環境,解体方法等の違いが,人工数や廃棄物発生量に及ぼす影響について検討した。 また,昨年度実施した3棟の解体実験・調査のデータと合わせて,石綿含有建材がある場合と,無い場合の解体工事手法の違いや,建設廃棄物の処理の違いなどについて分析を行った。 一方,本年度は解体工事現場から発生した建設廃棄物のその後の処理フローについても調査を行った。これは,解体実験・調査において取得したマニフェスト(廃棄物管理台帳)のデータをもとに,約40社の中間処理施設へ,その後の廃棄物処理の方法,再資源化率および処理の際の環境負荷についてアンケート調査を実施した。これらの結果については現在分析中であるが,回収率が低いことから次年度も引き続き,本件に関する調査検討を引き続き実施する予定である。 さらに,本研究の研究目的として解体工事において発生する環境負荷の算出がある。そこで,使用する重機のエネルギー消費とともに大きな要素として建設廃棄物の輸送があり,昨年までに得られたマニフェストの分析,すなわち解体工事現場と中間処理施設の立地情報および使用された廃棄物運搬車の調査結果をもとに,建設廃棄物の輸送について詳細な検討を行った。 その結果,建設廃棄物の種類ごとの平均的な輸送距離を明らかにするとともに,実際の建設廃棄物の移動フローからCO2排出量を予測した。建設廃棄物の中間処理施設における処理行為による環境負荷ならびに最終処分までの環境負荷などは明らかにできておらず,これらの課題については次年度に追加アンケートを実施することなどによって調査する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までに実施した3棟の詳細な解体実験・調査に,本年度2棟の追加実験を行い,合計5棟の詳細解体実験・調査を実施した。また,建設廃棄物の処理の追跡調査として,中間処理施設へのアンケートも実施できている。これらデータはおおむね当初の計画通りであり,本研究の目的を達成する上で十分な取得できている。ただし,中間処理施設へのアンケート調査の回収率が低い点を次年度において改善する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究を推進するためには,実際の解体工事や廃棄物処理に携わる業者に対して,成果を公表し,適正処理に向けた啓発を実施する必要がある。そこで,全国解体工事連合会や建設廃棄物処理協会などに,研究成果を公表していく。それによって,これらの協会等からさらなる追加データを取得することも可能となる。 本研究の特徴は,実際の解体工事・廃棄物処理を対象とした実データを分析していることである。問題点として,中間処理施設へのアンケートの回収率が低いことがある。回収率が低いままでは,特定の解しか得られず,汎用性の低いデータとなってしまう。そこで,建設廃棄物処理に関しては一般解を求めることとし,次年度は全国の中間処理施設へのアンケート数百件を実施し,回収率が低くい場合でもデータ数を増やす工夫をする。
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