本年度は,有害物質除去と再資源化を考慮した適切な木造戸建て住宅の解体手法に関する検討を目的に,昨年度までに実施した約50棟の解体実験・調査から,石綿含有建材の有無が解体工事や廃棄物処理に及ぼす影響について検討を行った。 また,昨年度実施した建設廃棄物のその後の処理フローの調査結果を踏まえ,実際に廃棄物が持ち込まれた中間処理場へのアンケート調査を行った。調査内容は,受入廃棄物種類およびその量,処理に必要なエネルギー(電力,燃料等),場内使用している重機種類と稼働時間,リサイクル施設・最終処分場への持ち込み量およびそれら施設への搬出状況などである。 これら調査・分析の結果,次のことがわかった。(1)石綿含有建材のある物件の作業時間は,石綿含有建材が含まれない物件に対して,総労時間で約1.3倍程度かかるが150㎡以上の大型の物件では影響が小さい。(2)石綿含有建材の有無での内外装材撤去時間への影響は,内装ではあまり影響はないが,外装では約1.6~2倍の影響がある。(3)石綿含有建材の有無によって,木造戸建て住宅の物件の廃棄物量にはあまり差がない。(4) 中間処理以降の廃棄物ごとの環境負荷の大きさは,木材,コンクリート,繊維くず,廃プラスチック類の順である。 また,本研究3年間の成果としては次のことが挙げられる。(1) 木造戸建て住宅の解体以降の環境負荷を求めると,現場:輸送:処分=10:5:5の割合である。(2)解体工事にかかるコストを建物の床面積等の情報から予測することが可能である。(3)有害物が存在する場合には,解体工事の時間が若干増加すること,廃棄物処理が特異であることから工事費は若干増加する。(4)有害廃棄物が存在する場合でも既存の分別解体をしっかり行えば,他の廃棄物処理・リサイクルに及ぼす影響は小さい。
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