せん断入力型方杖補強部材の圧縮・引張繰返し載荷実験による力学的性能の検証 方杖補強部材は鉄骨造建物の耐震補強手法として有効な手段の一つだが、22年度に実施した部分骨組架構実験では、方杖補強部材は周辺の柱・梁部材に比べて相対的に強く、実験終了時には柱が全塑性耐力に到達する事が確認された。この状況は方杖部材を軸抵抗部材として捉える限り、鋼材の物性(応力-歪関係)に依存することとなり大幅な改善が困難である。そこで、方杖補強部材の剛性・耐力が調整可能で、その塑性変形性能を利用して制震デバイスに活用する「せん断入力型方杖補強部材」を提案した。 研究の端緒として方杖部材単体の単調引張載荷実験が遂行された。その結果、同方杖補強部材の性状を定量化していく上で、せん断入力に対しての仮想柱部分(スリットとスリット間の抵抗体部分)の長さ、幅及びスリットの数が荷重(N)-変形(δ)関係に影響してくることが確認された。しかし、この実験の段階では仮想柱以外の因子も荷重(N)-変形(δ)関係に含む状況となった。そこで引張・圧縮繰返し実験では、既往の実験を基に試験体の測定方法の改良を行い、主架鋼部材に取り付ける形式で載荷実験を行なった。繰返し載荷による仮想柱部分の性状の把握、又、既往実験との比較検討も合わせて試みた。本補強部材は変位制御で行った載荷実験で低振幅領域の正負5回の繰り返しに安定した履歴ループを描き良好なエネルギー吸収を得る事の可能性を示した。また、抵抗体部分(仮想柱部分)に対する剛性評価及び耐力評価は本補強部材の軸入力(N))-変形(δ)関係に対する剛性低下点及び極端に剛性の低下する点を良くとらえている事を確認した。
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