研究概要 |
地球温暖化防止や省エネルギー対策などの環境問題の面から,我が国においても風力発電をはじめとする再生可能エネルギーに関する技術開発や,その利用促進の動きが活発化しつつある。その一方で,風力発電施設については,そこから発生する騒音や低周波音によって地域住民が悩まされているとの報告例も少なくない。そのため,平成25年度から環境影響評価法の対象事業の一つとして追加されることもあり,国内の様々な施設にて低周波音成分を含む騒音の実態調査が実施されている。 本研究課題では,今年度,研究初年度に実施した石川県内にある定格出力1500kWの大型な風力発電施設において実施した11月~3月までの3カ月間(約10日間,約15地点の同時測定)にわたる膨大な測定データを基に,まず風車から発生する騒音の水平および鉛直方向の放射特性と,その風速依存性について検討を行った。分析方法は,風車からの騒音とその地域周辺の音を区別するため,実音をモニタしながら200ms間隔の1/3オクターブ音圧レベルを算出するとともに,それらとナセル上部で1s間隔に観測されている風速,風向,発電出力,回転数との対応関係を検討した。その結果,1)風車から発生する騒音の水平方向の放射特性は,風向に対して90°方向でレベルが低く,その傾向は主要な音の成分である250Hz~500Hzの帯域で顕著であること,2)鉛直方向の騒音レベル分布は,ナセル中心からブレード下端までほぼ一様であること,3)発電出力の増加に伴って騒音レベルは上昇するが,ある程度の出力に達するとレベルは一定となること,4)またJISなどで規定されている風車騒音の測定では風速データを基に整理することになっているが,それよりも発電出力の方が機種によって異なる発生騒音の特徴を把握するのには良好であることなどを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では,今年度中に測定データをすべて分析する予定であったが,騒音発生源である風力発電施設からの騒音の放射特性を正確に把握すべきであると判断したため,測定地点数を計画段階よりも多く設置するとともに,長期間にわたり測定を実施しことで分析が順調には進まなかった。しかしながら,綿密な測定を行ったことにより,これまで不明確であった風車の水平方向および鉛直方向の音響放射特性の実態をかなりの精度で把握できたと考えている。また,風車から遠方での地点で測定したデータを基に,研究目的の一つでもある音の伝搬に及ぼす気象の影響についても検討可能であることから,全体計画に対してはおおむね順調であると判断した。
|