本研究は、住宅のゼロエネルギー化を目指した熱回収型通気断熱壁体技術の確立を大きな目標としている。今年度は、熱回収型通気断熱壁体のシミュレーション検討および実験住宅を用いた効果検討を並行して行っている。 まず、実験住宅を対象とした通気壁体実験の評価を行うため、実験住宅の北側1階外壁部分を通気壁体仕様に改造した。また、実験住宅内の換気経路を確保するため、南開口部面をダブルスキン化するとともに、2階北側面に150φの排気筒を2本設置し、自然排気経路を構築し、モニタリングを行った。実測の結果、実験住宅の規模に比べ、実際の風量が大きくなったものの、想定した空気流れを実現できることが確認できた。ただし、風量コントロールによっては、外気温度が低い時期には通気壁面温度低下を生じる恐れがあるため、適切な表面温度コントロールが必要となることが明らかとなった。 さらに、実験住宅をモデルとして、換気性状および熱負荷に関するシミュレーションを実施した。実験住宅レベルでは換気ボリュームが小さいため、全体の負荷としては減ることは確認できたものの、期待したレベルではなかった。しかし、シミュレーションにより、ある程度の規模・大きさ以上の住宅で設定することができれば有効性が高まることを確認できた。また、通気壁体の通気性能(圧力損失)とパッシブ換気システムの風量との組み合わせを十分に考慮した材料選定が必要であることが示された。現状では、断熱材料(特に、比較的ポーラスな繊維系断熱材を使用することになる)の通気特性(圧力損失特性)が整備されていないこと、また必要な熱湿気物性値として教科書的なデータしかなく(すなわち個別に測定しないと得られない材料が多い)、設計に必要な材料物性値の整備が今後の課題である。
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