本研究は、英国と米国の公園・緑地の整備のうち、特に1960年代後半から1990年代前半にかけて行われた、公園整備と緑地保全の方策とその効果について明らかにすることを目的としている。平成22年度の研究実施計画は、英国に焦点をしぼった次の2点であった。英国の公園整備と緑地保全にかかわる1965-95年の取り組みについて、特に地方分権化や民営化による政策の変遷と、それを受けて確立した公園・緑地行政の新たな方策のしくみについて明らかにする。また、政策の変化を受けた自治体の対応として取り組んだ計画と事業の実態を明かにしながら、その効果と課題を分析する。 前者については、政策の変遷について文献調査し、現地調査によって英国図書館などにて資料を収集した。後者については、ロンドン市についてはシティ公文書館やロンドン大学図書館にて、またリバプール市についてはリバプール市公文書館にて資料収集するほか、それぞれの市役所の緑地担当者にヒアリング調査を行った。 調査の結果、1960年代後半から、自治体において公園の利用状況や管理状況また整備の方針についての評価がはじめられていることがわかった。この背景には、戦災復興としての公園・緑地整備が一段落を終えると同時に、景気の後退と同時に公共投資の減少があり、その後、民営化による公園・緑地の整備と管理に移行していく経緯が明らかとなった。逆に1980年代後半からは、民営化による課題が調査書などによって指摘されており、公園・緑地の特に管理運営について見直す方向が明らかとなっている。地方分権化と民営化の政策に対応すると同時に、郊外化などの都市構造の変化や政権の交代などの地域固有の課題への対応が、自治体の公園・緑地の整備計画に見てとれるが、事業化された計画の数は多くないことが明らかとなった。
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