本研究は、英国と米国の公園・緑地の整備のうち、特に1960年代後半から1990年代前半にかけて行われた、公園整備と緑地保全の方策とその効果について明らかにすることを目的としている。平成24年度の研究実施計画として、英米の両国の最終調査を行った。 英国については、前回の調査の際にリバプール市の公文書館の改装工事のために一部資料が閲覧できなかったため、再度訪問し資料調査を行うとともに、再整備工事の終了した都市公園を現地調査した。またロンドン市についても資料調査をすすめ新たな資料を見出した。 米国については、ニューヨーク市の公文書館にて資料の最終確認を行うと同時に、都市公園の官民パートナーシップによる管理運営に関わるヒアリング調査を、ニューヨーク市とセントラルパークやブライアントパークにて行った。 両国の現地調査を終了した結果より次のことが明らかとなった。英国については、1960年代後半からの景気の後退と公共投資の減少に対応して、民営化による公園・緑地の整備と管理に移行していく経緯があったが、1980年代からは、民営化の政策による課題も指摘され、公園・緑地の特に管理運営について見直す方向が明らかとなっている。首都であるロンドン市と港湾地方都市であるリバプールの都市構造の差による政策の違いはあるが、英国全土において同様の流れがあったことが確認された。 米国については、官民パートナーシップは行政サービス全般に対して導入されたものを受けて、公園緑地政策にも波及し公園緑地の管理運営に対して民間の活力が70年代から利用されてきたことがわかった。しかしながら、連邦制度をとる米国においては州ごとに政策がたてられており、人口増加が継続的にあるニューヨーク市と大学数全米一の学術都市としてのボストン市による違いも明らかになってきた。
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