研究課題/領域番号 |
22560596
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
石坂 公一 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (40282115)
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キーワード | 人口減少 / 高齢化 / 居住資源 / 地域力 / 東日本大震災 / 津波浸水地域 / 住宅復興 / データ推計 |
研究概要 |
本年度は研究の中間年度として、当初の研究計画に沿った作業を進めるとともに、3月11日の東日本大震災の被災地に位置する大学としての特性を活かし、地域マネジメントシステムの震災時における機能や震災前後の地域住民意識の変化を把握するため、当初の研究計画を一部変更して研究を実施した。 1.基礎データの整備の継続:昨年度に開発した方法を用いて、基礎データの整備を継続した。対象地域としては、新たに被災県である岩手県、福島県を加えるとともに、比較対象として首都圏の一都3県の都県を対象として、基本単位区等のミクロな地域レベルにおける居住状況関連データの推計作業を行った。 2.津波被災地域の特性分析:推計した基本単位区別データと津波浸水地域領域データを重ね合わせることで、津波浸水地域の年齢別人口、家族型別世帯数等の基礎的な居住状況の把握を行った。また、1995年から2005年までの傾向から、被災地域の今後の人口動態を予測し、復興のための住宅需要量の算出を行った。 3.「居住資源」「地域力」の計測方法の精密化:昨年度に開発した「居住資源」「地域力」計測システムを災害ポテンシャル及び災害への対応力の観点が含まれるように拡張するとともに、災害リスクを「資源」の中に明示的に取り込む方法について検討した。 4.震災時および震災後における地域住民意識の把握:震災時に地域マネジメントシステムが果たした役割および震災前後における地域住民意識の変花を把握するため、当初の研究計画には含まれていなかった大規模な住民アンケート調査を実施し、震災前後の住民意識の変化を社会関係資本の観点から分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当研究期間は、東日本大震災の被災地域にあり、研究環境も少なからず被害を受けた。平成23年度は震災からの復旧活動に多大の時間を割かざるを得ず、その分当初計画の進捗がやや遅れたことは否めない。反面、通常時であれば把握することが困難な震災前後における住民意識の変化の実態を把握するための調査が可能となったことや被災の実態を詳細に把握することが容易であったこと等の「時の利」「地の利」も存在し、本研究の遂行にあたってはこれらの「利」をできるだけ活かすことを心がけた。この意味で、当初の計画との比較では進捗はやや遅れていると言えるが、当初の計画には含まれていなかった貴重な成果が期せずして得られつつあるとも言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策としては、期せずして得られた知見と情報を最大限取り込みつつ、当初計画に沿った形で研究を進めていく方針である。具体的には、「居住資源」「地域力」計測システムを災害ポテンシャル及び災害への対応力の観点が含まれるように拡張し、防災的な観点を含む形で地域の居住資源を評価するとともに、高齢化のみではなく、安全性や非常時の対応力の観点からも地域のマネジメントシステムが具備すべき条件について考察し、平成24年度末には一連の結果をとりまとめる予定である。
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