わが国の高齢者が居住する住宅のリフォーム実態と比較するため、高齢者住宅に対するリフォームを、権利として保障し、実施できる体制と方法を制度化した福祉国家デンマークにおける実態調査を実施した。 今まで継続的に実態調査を実施してきたコペンハーゲン市内の、大規模で歴史のある高齢者住宅団地を対象として選定し、現在におけるリフォーム実態を調査し、そのようなリフォームを行うのに至った要因、その成果の評価、今後のリフォーム計画について資料収集を行った。コペンハーゲン市の建物のリフォーム計画を行った建築部の担当者と、福祉部門の担当者に対する調査を実施した。経緯と意図については聞き取りによる調査とし、関連するデータと設計図、今後の高齢者住宅政策の計画と当該住宅団地の計画については、資料を収集した。また、使用状況については、写真により記録した。その結果、大規模な団地は、分割しつつ市民の利用可能なように地域に開放していき、保育所や公園を設置し、高齢者用の住宅であることを識別できないように溶け込ませている地域的な位置付けが大きく変化していることが分かった。職員の配置を合理化する検討も行われていることも把握できた。また、現在コペンハーゲン市が建て替え、新築している2つの高齢者住宅を調査し、現在のリフォームが目指す高齢者住宅のあり方を明確にした。これらの調査データについては分析中だが、貴重で重要な知見であるため、継続した分析を行い、発表する予定である。 また、わが国の高齢者が居住する戸建住宅の居住室と設備の工事箇所・改善実態と生活内容について、愛知県半田市を対象に実態調査を行った。引き続き、本年度の先進的な福祉国家における実態分析と、昨年度までにわが国で行った調査データを含めて両国の比較検討を行い、わが国における高齢者住宅を対象としたリフォームのあり方に示唆を与える提言としてまとめる。
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