研究概要 |
昨年度は、コロンボにおける宗教施設の立地、建設年代、建設者に着目することで、多様なエスニック集団の居住地形成を歴史的に跡付け、またこれらの集団の移住をつうじて環インド洋の都市間の結びつきを明らかにした。今年度はこれを踏まえて、特にムスリムの居住地に焦点を当て、日常生活と景観、住居や路地などの物理的配置の3つの要素に着目してそれらの相互作用として成立している居住環境の、植民地期および国民国家成立以降の動態を明らかにした。また、居住環境の変容が、国民や国家の追求したナショナリズム、経済開発から影響を受けつつも、日常生活を基礎とする独自の論理によって進展したことを明らかにした。 以上を踏まえて、居住環境を理解する上での基礎的視点を提示した。加えて、居住者自身による主体的な居住環境形成の試みとして、調査地において居住者とともに集会所兼学習塾の建設プロジェクトを提案した。 研究成果は、Kyota YAMADA, Viewing Sri Lanka from a Perspective of New Moor Street and Ghaus Moidheen Mawata, Colombo, International Conference on Islam and Multiculturalism: Islam, Modern Science, and Technology, Jan., 2013, Kuala Lumpur, Malaysia、山田協太, 日常活動の集積からハブ都市コロンボとベンガル湾海域世界の動態を考える―宗教施設の立地から見る17世紀以来の都市ネットワークの変容, 総合地球環境学研究所・メガ都市プロジェクト 全球都市全史研究会報告書, Vol.8/9/10, pp.44-65, 2013年3月、等として発表している。
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