本研究は、日本の既存住宅流通を活性化させる為には、住宅の「社会的耐用年数」を長期化させることが不可欠であるとの観点から、イギリスの都市計画規制を含む住宅供給システムを検証し、社会的耐用年数の長期化を実現するための諸条件を明らかにすることを目的としている。 当該年度は、住宅の開発主体である民間企業および非営利組織による住宅開発プロセスに関する調査と、イギリスの住宅供給に関連する制度インフラの調査分析に着手した。 民間の住宅開発産業は、多数の小規模ビルダーと少数の大規模ビルダーによるヒエラルキー構造を有しており、小規模ビルダーは年間30戸程度、大規模ビルダーは年間500戸程度を建設していたが、競争の激化と市街地の低未利用地開発における高度な技能の必要性、アフォーダブル住宅供給の促進による財政基盤の問題等から、小規模ビルダーの淘汰が進んでいる。他方非営利組織も同様にヒエラルキー構造を有しているが、ここ10年ほどで非営利組織同士の吸収・合併が進んでいる。 イギリスの住宅供給は昨今その大半を民間および非営利組織が担っている。供給プロセスは、1.開発用地探索プロセス/土地取得プロセス、2.用地鑑定/開発実現可能性の査定(経済性・配置計画等)、3.デザインおよび住宅建設プロセス、4.ファイナンスおよびマーケティングに大きく区分されるが、社会的耐用年数との関係では、1~3における土地利用および空間利用のあり方と、1、2、4における土地供給のあり方に着目をして、空間形成及びその維持のメカニズムと住宅価格(取得可能性)の分析を進める必要があることを確認した。
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