本年度は、全国の児童養護施設のうち生活単位(一日のおおよその生活を共にする集団を指す)の小規模化に関する実態を把握する目的で、中舎制と小舎制のあわせて205施設に対する質問紙調査を行い、45%の回答を得た。そこから明らかにされた点を以下にまとめる。 1)中舎制・小舎制施設は1950年代より一貫して傾向にあるものの、2000年代に入るとそれまでにない著しい増加がみられている。 2)平均児童数は8.9名という規模の生活単位であるが、施設による職員配置や勤務体系の工夫が把握された。 3)児童が居住する建物については、2000年代竣工のものが半数を占める一方で、築40年以上を数えるものも2割強確認された。平面構成としては、生活単位毎の独立性からみて、小舎分棟型、2戸1型、n戸1型、未分割型に分類された。 4)80年代からの施設形態の変遷に着目すると、「伝統小舎型」「小舎転換型」「新小中舎型」「中舎型」の四つに類型化され、中舎制や大舎性から小舎制の併用や転換を行った「小舎転換型」が36%と最も多く、また職員の住み込み制は主に伝統小舎型に見られるといった特色が把握された。 5)施設運営における課題は、主に職員体制といった制度に関わる項目と、職員の育成や情報共有といった職員の働き方に関する項目が指摘されている。 6)本年度の成果を踏まえ、次年度は典型的な平面構成の施設を事例的に抽出し、施設内の生活展開や勤務の実態と空間との関わり、施設運営における課題について明らかにする。
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