研究概要 |
民家活用施設の場合には、用途に応じた平面計画・設備計画のみでなく、耐震診断・補強設計を計画・設計段階で位置づけることが必要で,専門家を含めた計画策定組織を設立し耐震補強の重要性の理解を共有することが重要課題である。設計段階では平面計画と耐震補強設計の整合性を担保すると同時に、設備設計を含めたコスト分析が重要で、施工段階では工期の短縮と施工手間の削減を行うことが重要である。基幹施設と民家活用型の小規模施設のネットワーク形成により、利用圏分担効果・送迎時間削減効果・機能分担効果に加え経営採算補填効果が確認され、過疎地域における高齢者デイサービス施設整備の有効な方法として位置付けられた。基幹施設は介護度の高い利用者にも対応可能な空間機能を有し、的確なサービスが提供されており、民家を改修した小規模施設では、介護度の低い利用者が中心であるが、職員の空間利用と介助の工夫によりデイサービス施設として有効に機能していることが確認された。 現状の民家活用施設の使われ方は、施設系の「1室完結型」に対し空間機能分化がなされた「午睡室分離型」が多いものの、「3室独立型」では職員の準備始末行為の負担が少なく、プログラム転換時円滑な進行が可能で、利用者の居場所の選択範囲が広くなることから、自由行動・食事・午睡を分離する民家のデイサービス施設としての有用性が示唆される。「3室独立型」の空間機能分離が行えない場合にも、居間領域と食事領域を設定し、狭い面積の中で昼食前後の円滑なプログラム運用を実現する事例や、逃げの場を確保した上で家具移動により空間を確保し、一連のプログラムを遂行する事例等、一日の生活プログラムの展開に伴う準備行為を空間的・時間的に先行して行い、空間規模の制約を解決する事例がみられたことから、伝統民家の小規模なデイサービス施設としての活用可能性は大きいものと判断される。
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