研究概要 |
本研究は、歴史的建築物を対象として、地上設置型のレーザースキャナーによる測量によって得られる点群データからベクトルデータに効率よく変換する手法を提案することを目的としている。特に、点群データの属性によりクラスター分析を行うことで、素材・部位単位に点群データを分類し、その点群データを基にモデリングすることで、建築オブジェクトとしてCADデータに変換する手法を開発する。22年度までに、色情報(R,G,Bの値)と反射強度(Iの値)の4属性値によるクラススター会析により特異な色系統を属性にもつ点群データを分離し、建築物の扉や窓といった部位を抽出することができた。しかしながら、この手法では、同一素材で建築部位の異なる部分(例として、煉瓦造における壁と柱形の区別)の点群データは分離できなかった。また、地上からスキャンしているため、屋根上部等の死角部分のデータがないという問題があった。23年度は、色情報と反射強度に加え、ファサードの奥行の値(yの値)でクラスター分析を実施した。その結果、同一素材でも表面の凹凸によって、建築部位を区別することができ、対象とした煉瓦造の建築物を1.柱形と胴蛇腹、2.壁とペディメント、3.梁形と軒蛇腹、4.柱と軒蛇腹、5.補強用鉄板と窓台、6.扉、7.ガラス、8.サッシ、9.付帯設備の9種類の建築部材を独立して抽出することができた。また、バルーンを使って対象建築物の上空から写真撮影を実施し、写真測量による屋根部分のCADモデリングを行い、点群データによるCADモデルと統合した。その結果、スキャナーの死角で計測できなかった部分を補完するCADモデルを作成することができた。24年度は、点群データからCADデータ及び図面への効率的変換手法の高度化に取り組む。
|