居間中心型住宅が家族中心志向の実体化であることを反映して、座敷・和室のとられ方も居間の補助空間化の傾向を先に示した。「家族内交流の促進」をはじめとした居住後評価も高いが、果たしてこれが生活実態に順応しているのかを検証することが、大きな課題の一つである。そのため、平面構成を5タイプに類型化し、居住プランと選好プランの一致・不一致について、ライフステージおよび座敷・和室の使われ方との関係で分析している。 22年度のデータの補完によって、全国10地域616件のデータ取得を完了し、分析・考察を行っているところであるが、平面構成の上で主流になりつつある居間と座敷・和室の続き間タイプの居住者が同じタイプのプランを選好する比率は相対的に低く、一方近年減少しつつある「一つ間座敷」の一致率は高いこと、さらに、出現率が5.5%でしかなくなった和室2室の「続き間座敷」は、選好プランでは25.0%もの高い割合を示していることなどから、供給実態の上での居間と座敷・和室の「連続化・一体化」の傾向に対して、選好で認められるのは、これとは正反対の「分離化・拡大化」の志向である。さらにこの傾向は、子の成長とともに顕著となり、また、座敷・和室の使われ方が「接客のみ」あるいは「家族生活のみ」に純化している場合にも同様の傾向が強くなるこを明らかにしつつある。加えて、上記の分析・考察を深化させるため再訪問による詳細調査も行っており、本年度は93件の有効データを得ている。本年度さらにサンプルを補い、プランの評価や生活の拠点性などに関する親子の違いなども含めた知見を得たいと考えている。また、もう一つの課題である室内温熱環境シミュレーションは、申請時に検討していたものを大幅に上回る性能のソフトを見出したため、別途予算を支弁して購入した。分析対象とするモデルプランと建物性能の条件を確定し、現在試行的な解析を行っているところである。
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