研究の初年度にあたる22年度は (1)竹材を用いた伝統的な架構・構法技術の収集、および分類・整理 (2)竹材の構造特性(部材・架構)の把握および構造計算手法の確立、の作業を行った。 1の文献調査では、竹を用いたヴァナキュラーな建築技術に関する国内外における研究成果を収集し、竹材を用いた構法に的を絞って整理した。 2の構造実験では、具体的な架構の構造実験に入る準備段階として、引張り・圧縮・曲げについての材料実験および架構としての構造特性確認実験を行なう予定であったが、学生の長期療養、年末の大雪により実験実施が難しくなり年度内の遂行が不可能になった。そのため、一部を平成23年度に繰り越したところ、平成23年3月に発生した東日本大震災において、本研究の緊急かつ実践的な対応が求められるようになったため、緊急課題として、竹を用いた仮設建築の実施工およびそのための構造実験・解析を最優先にして行い、10月に「竹の会所」を完成させた(宮城県気仙沼市本吉町)。 このうち、平成22年度繰り越しによる研究としては、被災地に生息する竹の調査および構造性能室内実験、接合部の開発および強度確認実験を行っている。 被災地における竹の調査では、生育する竹の径、種類を調査し、本構造物に適した材料(メインアーチ材には細径の孟宗竹、床材には太径の真竹)を選別した。さらに室内実験では、生育地域(東北、関西)と種類(孟宗竹、真竹)による材の構造特性の違いを実験により確かめた。接合部の開発においては、特殊な金物を用いない接合法を模索し、番線やロープなど、いくつかの材料や組み合わせを検討し、載荷実験によってせん断耐力と変形について検討し、人力での施工が容易な接合部の開発を行なった。
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