研究課題/領域番号 |
22560621
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
陶器 浩一 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (50363958)
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キーワード | 竹構造 / 空間構造 / 応急仮設建築 / 構造デザイン |
研究概要 |
平成23年3月に発生した東北大震災において、本研究の緊急かつ実践的な対応が求められた。具体的には、宮城県気仙沼市本吉町において、津波で失われた集会所に替わる、住民の心の支えになる施設を地域住民から求められたため、平成23年度は緊急課題として、竹を用いた仮設建築の実施工およびそのための構造実験・解析を最優先にして行い、10月に「竹の会所」を完成させた。 建設は、研究室およびボランティア学生の手により特殊な技術や工法を用いることなく完成させ、また、実験的施設であるが実際に供用されるものであるため、仮設建築物として建築確認を得ている。 このうち、平成22年度繰り越しによる研究としては、被災地に生息する竹の調査および構造性能室内実験、接合部の開発および強度確認実験を行っている。 平成23年度予算による研究としては、上記予備実験を踏まえ、実際の架構の立案、および実大架構を学内にて制作し問題点を洗い出し、架構の詳細を決定していった。各フレームについて竹材の断面・ヤング係数を用いた幾何学的非線形解析によりアーチ部材の曲線形状を求め、部材長さを求めている。応力解析は長期荷重、短期荷重(風荷重時、地震時は時刻歴応答解析を行う)に対して行っている。部材応力については、アーチ材の曲げ加工による初期応力を加味し、許容耐力以下となるよう設計した。施工にあたっては、材料となる竹材の調達から建設作業の工程を建設地周辺の住民と学生ボランティアの手作業により行なうことを前提としており、特別な技術や大がかりな重機等を出来る限り用いることなく実施が可能となるよう施工計画を立案した。9月から10月にかけて、約30日間、延べ70人の学生によって建設した。 これら成果は、日本建築学会大会(平成24年9月)にて発表を行うと共に、多くの建築専門誌、一般紙、学会誌等に発表していると共に、国内外の雑誌、新聞等で紹介されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
東日本大震災の被災地において本研究の緊急かつ実践的な対応が求められるようになったため、緊急課題として竹を用いた仮設建築の開発おうおび実施工を先行したため、当初計画より迅速かつ具体的な研究を行うこととなった。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、この実験的施設における実地試験を中心に以下の研究を行う予定である。 ・「竹の会所」における実地試験:丸竹を用いた建築物の構造性能の経年変化調査、強度試験、振動実験。 ・丸竹の構造材料としての構造特性試験:引張り・圧縮・曲げについての材料実験および架構としての構造特性確認実験。パラメーターとしては、材齢・断面・節間長さ・乾燥状況等を考えている。 ・被災地における仮設建築の有効性:震災以降の本建築の使われ方を検証し、被災地における仮設建築の有効性についての考察を行う。 以上を取りまとめ、竹の特徴を活かした架構システムおよび構造計算手法を確立し、被災地における有効性について検証を行ってゆきたい。
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