平成25年度には現地で社会住宅団地の調査を実施するとともに、専門家へのインタビュー調査等を実施し、社会住宅部門の動向、課題を把握した。また、日本の公営住宅制度について、実態と課題を把握し、日仏比較の観点から、研究成果をとりまとめた。具体的には、以下について、考察、整理を行った。 ①社会住宅を一定量確保するという公共政策は、住宅・土地価格の高騰、住宅確保要配慮者の増大など2000年代の市場の変化をうけて、幅ひろく支持されるようになっている。②住宅手当制度は援助形態として否定されてはいないものの、その有効性は限定的である。③社会住宅は、需要する世帯の立地選好やライフスタイルの変化に対応しなければならなくなっており、事業主体による多様な取り組みが展開されている。④社会住宅の供給を支える主体は、国から地方公共団体をはじめとする地域の多様なステークホルダーに移行しつつある。⑤日本では民間賃貸住宅を活用した重層的なセーフティネットの構築が目指されているが、フランスの経験に照らせば、立地条件、住戸の割り当て方法を制御するのは容易ではない。くわえて、日本では住宅の質の担保が課題になる。⑥日本の公営住宅制度は、特定層の入居を促進しやすいシステムである。フランスの経験に照らせば、団地再編事業で集約化するという方向は回避すべきである。⑦建設助成は、住宅の良質化と住宅確保配慮者が利用可能な住宅の増加をもたらす手法である。しかし、制度運用方法については、慎重な検討が必要である。
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