研究課題/領域番号 |
22560623
|
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
多治見 左近 大阪市立大学, 生活科学研究科, 教授 (10163461)
|
研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 公的賃貸住宅 / 住宅市場 / 人口・世帯構成 / 住宅建設活動 / 住宅・土地統計調査 / 地域特性 |
研究概要 |
平成24年度の研究目的は、住宅・土地統計調査による公的住宅分析の継続と地方自治体に政策意図との関係の検討であった。平成23年度に行った、都道府県別の住宅市場における公営借家の位置づけ研究についても、発展させることとした。 昨年度の研究成果として、都道府県別に公営借家が住宅市場の中で突出した役割を有するか否かがそれなりに識別されたが、標準偏差の重複度を識別基準としたために、より基本的な平均値の意味が分かりにくくなったことが反省された。その改善のための試行錯誤にかなりの期間を要したが、住宅種別の平均値を主として解析を進めることに方針を変えて分析を進めた。その結果より鮮明な傾向を得ることができ、しかもその結果は感覚的にも納得されやすいものとなった。すなわち典型的タイプとしては、公営借家入居世帯が住宅市場の中で著しく高齢、低収入に偏る地域や、それと逆に、民間の賃貸借家入居世帯とより近い年齢層、収入である地域で、公営借家が他の借家に近い役割を果たしている地域、さらに入居世帯としては若年層が多い点では民間借家に近いが、低収入などの要因が認められる地域である。また住宅自体の位置づけとしては、民間借家に遜色ない地域と地域の住宅市場のなかでは相対的に低水準である地域とがあり、それらの諸要因が公営借家の役割を規定していることがうかがわれた。 また以上の分析のなかで、都道府県別の、例えば年齢の全住宅平均値と住宅種別の差(偏差)によって住宅種別の住宅市場での位置づけが鮮明になるという発見があり、住宅市場特性分析の有効な方法となると評価している。 分析・考察から得られたこれらの想定をもとに、典型的な都道府県にインタビュー調査を行ったところ、そのような想定が妥当であると判断された。現在、以上の内容をもとに査読付き論文の作成中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2011年に査読付き論文を申請したが、要求された修正を期限までに行う時間ことが学内事情などでできず、また求められた修正によって本来の趣旨と異なる論文になる可能性もあった。それであれば別論文としての提出を行うことに方針を転換し、その対応に時間を要した。本来であれば次のテーマに取り組む予定であったが、これまでのテーマを継続せざるを得なかった。しかしいくつかの自治体(県)へのインタビューにより次のテーマを部分的には達成はできた。また人口・世帯特性に関する研究は、本研究だけでなく一定の蓄積があり、当研究室においても別に行っている内容を統合できるので挽回は可能と考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
全ての都道府県における人口減少予測が話題となっているが、申請者は、かつて行った人口分析から予想していたことでもあった。本研究は公的住宅に焦点をあてているが、住宅市場のなかで位置づける背景には、地域状況によって求めらる住宅施策が当然異なるが、具体的にどうするかという見通しや根拠が不鮮明であることがある。本研究は地域状況を的確に把握したなかで公的住宅施策を位置づけるという意図をもっている。その意味で、今後は地域特性を住宅や地域空間という観点から明らかにする研究を継続する予定である。 研究テーマは多岐にわたるが、公的借家などの住宅政策と人口構造との関係については本研究のテーマの一つであり、現在進めている論文作成が終わり次第、人口との関係についての検討を進める予定である。 また人口・世帯構成や住宅構成、地域経済指標などの社会・経済指標との関係性分析に展開する予定である。
|