研究概要 |
平成23年度は時空間情報パッケージによる各々の用途に応じたモデリングの実験を中心に行った。まず行動モデル,空間の質,空間のマッピング等についての既往研究のレビューを行った。建築スケールを対象とする事例が主であったが,本研究に応用可能な知見が多数含まれた。次に,景観シミュレーション,都市デザインのプロセスに対応するゲーム作成に向けたデータモデルの検討を行った。用途とシナリオを想定し,都心商業地区の街区スケール時空間情報を生成,これを用いて目的と要求に対して適正な情報量(情報密度)と質のバランスについて検討を行った。FOSSであるBlenderと商用ソフトウェアであるAutoCAD,Ecotect(環境解析),Unity(ゲームエンジン),VirTools(VRアプリケーション)とのデータ互換を確認した。パフォーマンスの評価は,シャレット,ワークショップ等での利用を想定し,ラップトップPCの性能を前提に行った。シナリオ作成とゲーム技術の応用に関してはゲーミフィケーションに関する研究会に参加して応用事例を調査した。さらに,時空間情報のパッケージから適切な情報の量(情報密度)へと変換する方法について,Blender上のスクリプトでスケーリングを行うべく検討を行った。各用途に対して一方向のデータ構造の変換とデータ量の低減については一定の成果を得たが,時空間情報の可逆的なスケーリングについて課題が残った。CFDによる風環境の解析についてはメッシュ作成のルーチンを独立させ,FOSSであるOpenFOAMを用いた解析を試験的に実施した。
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今後の研究の推進方策 |
都市デザインのプロセスにおいてスケーラブルな時空間情報とそのプラットホームの利用可能性を検討する。対象地区におけるプロジェクトの目的に応じてシナリオを設定し,景観シミュレーション,風環境の解析等に用いる時空間情報のプロトタイプを作成する。これらの試用実験を通してデザインプロセスでの有効性,技術コストを踏まえた実効性を検証する。メッシャについては商用ソフトウェアを利用したテストを行ってきたが,FOSSを用いても生成可能な簡易型空間モデルを提案し,その精度と実用性を確認する。
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