研究課題
本研究は、いつ地震が起こってもおかしくないと言われる組積造の歴史都市であるカトマンズバレー(世界遺産)を事例に、地域のコミュニティ(生命)と有形無形の文化遺産(財産)を、市民が守る(共助)防災計画の策定について知見を得ることを目的としている。平成22年度は、カトマンズバレーの歴史都市パタンに存するジャタプール地区において、建築物およびオープンスペースの悉皆調査を実施した。併せて、地元住民を対象にワークショップを行った。悉皆調査は、主に歴史都市の価値を抽出するためのものである。建築物についてみると、調査時のヒヤリングでは、40%が1934年のネパールビハール大地震以前に建造されたとしている。その後、カトマンズ市による調査が行われた1964年までの約30年間に13%、2000年のユネスコ調査までの約40年間に34%、今回調査までの約10年間に15%が建造され、新たな建造が急速に進行している。カトマンズでは、13世紀から18世紀にかけて審美的な技巧を持つマッラ様式が形成され、宮廷建築、宗教建築だけでなく伝統的住居建築でも見ることができる。調査地域では、これらは地区東側道路付近に集中して見られ貴重であるワークショップは、まず、歴史都市の伝統的な住居等都市環境もまた守るべき文化遺産であることを解説し、地元住民の文化遺産および災害脆弱性に対する認識、緊急時の対応の状況を把握するためのものである。地元住民は、災害危険性が高まっていることの認識はあるが、何が安全で、災害時にいかにすればよいかわからない。また、個人レベルでの助け合いはあるが組織化されたものは見られず、不安を抱えていることがわかった。
すべて 2010
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件)
歴史都市防災論文集
巻: vol.4 ページ: 257-264
Proc.of the International Symposium on a Robust and Resilience Society against Natural hazards and Environmental Disaster and the Third AUN/SEED-Net Regional Conference on Geo-disaster Mitigation
ページ: 17-29
歴史都市を守る「文化遺産防災学」推進拠点報告書
巻: Vol.4 ページ: 86-87