平成22年度に行った研究は大別すると三つあり、一つは(1)瓦の多孔性に関する分析、二つ目は(2)試験体を用いた瓦屋根の熱性能に関する比較分析、三つ目は(3)沖縄県大城地区の国指定重要文化財である中村家住宅における伝統的赤瓦屋根の熱性能評価である。以下、その成果の概要を示す。 (1) 水銀ポロシメーター及び電子顕微鏡による分析から、現代の製法(真空土練とガス窯)による瓦の方が昔の製法(有空土練とだるま窯)の瓦より、孔が小さいことや同じ土練で焼成が異なる場合、だるま窯は中も表面も同じ孔であるが、ガス窯は孔が中より表面の方が小さいことが明らかとなった。 (2) 試験体を用いた実験は、同一工法による瓦比較と3つの工法による熱性能比較を行った。同一工法による瓦比較では、現代の製法では瓦の裏温度が上がりやすく、昔の製法の方が熱しやすいが冷めやすい瓦であることが明らかになった。しかし、これは古瓦を用いたため、製法によるものか、瓦の経年変化によるものか、平成23年度、新しい試験体を用いて分析する必要がある。工法の比較では、瓦裏の空気層を設けることがクールルーフにとって有効であることが明らかになったが、棟部に設けた換気口は、あまり機能しなかったため、換気口の有効性について沖縄の中村家住宅の知見と合わせて検討する予定である。 (3) 中村家住宅は沖縄最古の伝統的赤瓦の住宅であり、沖縄の気候風土と素材で、どのようにクールルーフをつくることが可能であるかという技術の粋を集めた屋根を有している。竹と珊瑚を含む葺き土や雀口と呼ばれる大棟周辺に開けられた換気口が温度だけでなく、湿度のコントールに有効であるというデータが得られたが、測定が一部、不十分なため、平成23年度により、正確な測定を試みる予定である。
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