クールルーフの観点から瓦及び瓦屋根をどのように再構築するかについて、大阪府吹田市関西大学キャンパス内に設置した1.8m×0.9m、5寸勾配の切妻屋根であるモックアップ(試験体)を用いた分析を通して明らかになった、そのポイントは、下地・瓦の接点・瓦のつくりかたの三点である。 瓦下地に関して、下地である野地板を二重にすることが最も効果的であるが、コスト面を考慮した縦桟木を用いて瓦裏に空気層をとる工法で、十分に小屋裏温度の上昇を抑制できた。 また、瓦の寸法精度が高くない手づくり瓦と機械成型された寸法精度の高い瓦では、手づくり瓦が空気が動きやすく、小屋裏温度の上昇に関して効果的であった。すなわち、瓦を葺き重ね、瓦と瓦の接点が生まれる瓦屋根では、面外方向において通気が可能であるというその特徴を活かすべきであることが指摘できる。 今回、淡路島津井集落の瓦師の協力を得て、伝統的な手づくりの瓦製造の復元を行った。それによって、かつてだるま窯で焼成された古瓦が現代の機械成型の瓦に比べて、多孔性を有していることは、今回の手づくり瓦においても、科学的に確認された。さらに、高温焼成ではない、機械成型の真空土練とは異なる有空土練の手づくりの瓦は、吸水率が高く、瓦裏温度が表温度に較べて上昇しにくい瓦であること、すなわちクールルーフとしての性能を有していることが明らかになった。 以上のことから、瓦裏に空気層をとり寸法精度の高くない低温焼成で有空土練の瓦で葺かれた瓦屋根は、熱伝導率が低い、つまり熱を伝えにくい性能を有しているといえる。しかし、その一方で、だるま窯焼成とガス窯焼成による差異とは何か、さらには手づくりでつくる瓦は極めて高コストになるため、一般的普及を考慮した場合、瓦製造の工程における手づくりと機械の組み合わせや原料である土の成分をどのように工夫するかという二点の課題が残った。
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