本研究は、救命救急センター(高度救急医療施設)を対象として詳細調査を実施し、診療機能と建築計画の関係について明らかにすることにより、これからの救急医療施設の施設整備に資する建築計画上の指針を得ることを目的としている。 わが国の救急医療体制のうち最も高機能である救命救急センターは、高機能かつ効率的な医療提供が可能な施設であることが求められるが、その建築計画を規定する要件としては、診療報酬に定める施設基準として人員配置・医療機器等の要件が挙げられているに過ぎず、面積や諸室構成、他部門との連携などといった建築計画の詳細については各医療機関に任されている。 そこで本研究では、下記の2つの観点から典型事例を研究対象として抽出し、詳細な実態調査を行うこととしている。 (1)都市部・山間部などの地理的条件、交通インフラ整備状況などの地域特性による運営状況の違い (2)設置形態(独立型・併設型等)や運用形態(救急単独型・ER型等)および同一地域内の医療資源の整備状況による機能の違い 平成22年度は、わが国における救命救急センターの全体的な概況について把握することを目的として、すべての救命救急センター(234施設)を対象とした郵送アンケート調査を実施し、87施設より回答を得た。このアンケートにより得られた施設情報について精査した上で、データベースを構築した。また先進的な取り組みをしていると考えられる救命救急センターを対象とした現地視察およびヒアリング調査を実施し、救急医療にもとめられる建築計画上の要件について医療スタッフと意見交換を実施した。
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