【目的】我が国の救命救急センターの運営体制と共に,既存施設の構成とその利用実態を明らかにすることを目的として研究を実施した. 【方法】①国および各都道府県の救急医療に関する資料を収集した.②全国の救命救急センターを対象に,運営状況,施設状況についての郵送アンケート調査を行った.同時に74施設の救命救急センターの平面図・フロアマップを収集し,分析を行った.③様々な環境下で運営されている19施設を対象として,施設訪問・ヒアリング調査を行った. 【結果】救急医療に関連の深い検査・治療室では,センター専用として整備されているのが多いのはX線撮影室(約50%),CT室(約40%)であった.位置関係については,救急利用の頻度が高いX線撮影室,CT室は初療室と同一階に置かれ,頻度が低い内視鏡検査室,高圧酸素治療室は初療室とは別階に置かれる傾向にあることが分かった.初療室と救急ICUとの位置関係は,初療室とICUが別階にある施設が全体の約8割を占めた. また救命救急センターの平面について,運営・施設環境の視点から,『①完全独立型』,『②三次独立型』,『③隣接型』,『④混在型』の4つに分類した.さらに用途によって平面を,治療部門,検査,家族・スタッフ,収納,病棟のカテゴリから面積割合を示し,各類型の特徴を明らかにした.結果,施設規模は,検査室,家族の居場所,収納の有無が大きく影響しており,小さな規模になるほど優先順位の低い部門であることが分かった. 【考察】施設計画の観点から,救命救急センターの現状について把握することが出来た.救急医療に必要とされる治療・検査関連諸室については,適切な配置ができていない施設が多くみられることから,本研究では都市型,地方型など立地条件に応じた救命救急センターの平面ダイアグラムを提案した.
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