第1次調査(平成25年10月4日~17日)では、過去3年間のトスカーナ、リグーリアの海洋小都市と後背地域の形成との比較研究として、サルデーニャ北西部の3海洋都市、アルゲロ、ポルトトッレス、カステルサルドと、後背地域のサッサリを集中的に調査した。フィレンツェ大学建築学部都市・地域計画学科のジャンカルロ・パーバ教授に同行を願い、現地での研究指導を数回にわたり受けた。特にアルゲロではスペイン・カタルーニャの移民が都市を再構成した事実が判明し、地中海を通した影響関係が都市形成に関与していた。また、サッサリ大学に招聘され、研究成果の一部と日本との比較を発表する機会を得た。第2次調査(平成26年1月27日~2月11日)では、同じく比較研究として、シチリア南東部の海洋都市、北からミラッツォ、タオルミーナ、カターニア、シラクーサを調査し、その後、内陸のラグーサ、モディカ、ノートを調査した。後者では特に17世紀の大地震で壊滅したあとの復興再生に向けた都市計画が、地域形成に大きく関与し、それによって海洋都市とのネットワークが再編された事実が明らかになった。両調査と、トスカーナ、リグーリアとは歴史的、民族的文脈が異なるため一概に比較できないが、相違性だけではなく、類似した現象も多くあり、海洋小都市と後背地域の形成過程の分析にあたって貴重な論点を得ることができた。現在、今回を含めた4年間8回にわたる調査の整理と、総括に向けた作業を進行させている。
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