日本中世に誕生した「方丈」は、主に寺院内に所在する住宅建築の形式で、前後3室の計6室から構成されるものである。本研究目標は、各室の連続性に着目して方丈建築の空間構成のパターンを明らかにすることにある。直接的な研究対象は、形式の確立期に該当する17世紀以前に建設された方丈建築の遺構で、各室の連続性を分析するために主に用いるのは、「内法上装置」(欄間・小壁など)と「障壁画」(襖絵など)の画題で、これらに文献・絵画史料及び修理工事報告書の記載内容を加えて用いることで、各遺構の室の連続性を明らかにできると考えている。 平成22年度から4ケ年間の期間で行う研究実施計画のうち、平成23年度には、具体的な研究計画を策定した後に、調査対象に関して見直しを行い、9月までに今年度の調査対象を決定して関連資料を収集した。 現地調査については、8月2~5日と1月24~26日に行った。8月には、丈六寺本堂(徳島県徳島市)及び関連調査として金比羅宮書院(香川県琴平町)・栗林公園掬月亭(香川県高松市)について写真撮影と資料収集を行い、2月には、衡梅院本堂・竜安寺本堂・建仁寺方丈・酬恩庵方丈(以上京都市)・普門寺方丈(大阪府高槻市)の5棟について、同じく実施した。
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