本研究は、近世京都の道に着目し、町・町家と道の関係性や、朝廷・幕府・寺社・町・町人などの様々な人々の道の使い方やその目的・背景・意義を明らかにし、新たな近世京都の都市空間の特性を都市史的視点から抽出することを目的とする。 そこで、まず研究初年度にあたる2010年度は、本研究課題に即する先行研究の蒐集ならびに基礎的資料・データの蒐集・分析を行った。 具体的には、町家と道の関係を抽出するために、上層町人や幕府・朝廷・公家に出仕していた家の文書を調査した。その結果、道を舞台とする祭礼や儀礼が開催される際の町家の使い方が確認できた。ただし、確認できた事例が少なかったため、町と関係する公家・寺社らの動向(例えば、祭礼・儀礼の見学を町家で行う公家らの動向)に関する史料蒐集・分析を行っている。特に申請者がこれまで蒐集してきた近世初・中期の史料に加え、近世後期の史料も幅広く蒐集することで、近世京都の道と町家との関係性の変容が解明できると考える。 また、近世京都だけでなく近世都市の特性の抽出や類型化を試みるため、研究会や学会に積極的に参加し、資料・情報収集や現地調査を行い、他都市や他時代との比較検討を行った。本年度は、近世京都の道の境界装置としての機能に着目し、戦国期に他都市で構築された惣構や京都の御土居等と比較・分析をすすめている。 以上の研究の成果に関しては、現在、分析をすすめており、論文として適宜発表する予定である。
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