研究課題/領域番号 |
22560640
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岸 泰子 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 准教授 (60378817)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 近世 / 京都 / 道 / 町 / 遷幸 / 火災 / 復興 |
研究概要 |
本研究は、公的空間であると同時に私的・生活空間である道に着目し、その空間特性やそれをとりまく社会構造を解明することで近世京都の都市の特性=都市性を明らかにすることを目的としている。 2012年度は、遷幸時にみる道の特性の解明を行った。安政度の天皇遷幸(火災後の仮御所から禁裏(内裏)へ還る儀礼)においては、先行研究でも指摘される特徴、例えば遷幸は天皇側の意図によって実現したこと、その遷幸の道筋の決定要因は天皇の「後見越」であること、町側ではさまざまなしつらえや準備を必要とするためにこの準備等を「迷惑」と思わない道筋が選択されたこと、などがあることを他史料を用いて再度確認した。そして、本研究で蒐集した史料を用いて、遷幸行列の沿道に居を構える町人たちは関係者を遷幸見物に接待していたこと、その接待を通じて社会的交流の場が形成されていたこと、火災後の復興過程において天皇の遷幸のためにその道筋にある町家を仮建てもしくは板囲いするなどして道筋の景観が整えられたこと、などを明らかにした。また、安政度遷幸では、遷幸の行列とは異なり天皇の清浄性や正統性の象徴である内侍所移徙は町中の道に現れることはないことに着目し、遷幸において道で披露されたのは天皇の「イメージ」であることも指摘した。これらは、道を中心にして展開された天皇・朝廷と町との交流という特徴だけでなく、近世天皇の存在性ならびに近世国家の特性の解明につながる成果といえる。また、比較検討から、このような特性は他の城下町等では見られない京都の特有性であることも明確となった。以上から、当該年度の研究実績は、近世京都ならびに近世国家の都市空間ならびに社会の形成・維持の特性を示す成果として重要であるといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多少の課題の変更はあるものの、概ね当初目的とおりに研究は進行している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の推進にあたっては、現地調査と文書調査が重要となる。後者に関しては、公家等の日記についてはデータベースが完成しつつある。ただし、町や幕府関係文書については把握が不十分な点もあるため、今後はさらに調査等で蒐集する予定である。前者については、個別の課題に即して、適宜調査を実施する予定である。
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