京都市上下水道局疏水事務所が所蔵する明治19年以降の琵琶湖疏水工事設計資料、土地売買・賃借関係資料、土地利用申請関係資料、水使用・電力使用関係資料、予算・決算関係資料の複写を行った。また、琵琶湖疏水記念館所蔵田辺(朔郎)家文書、京都府立総合資料館所蔵行政文書のうち、大津-蹴上間の疏水水運・遊船利用、御所用水の建設・管理、社寺の防火施設整備についての史料を収集した。その他、法務局所蔵の土地台帳、宮内庁書稜部所蔵「御所水録」も入手した。これらの史料から、御所水道については建設の経緯と管理の主体・内容を把握することができた。御所以外の防火計画・施設については、社寺を中心に個別に史料を収集し、おおよその見通しがつく状態となった。疏水建設用地については、疏水建設以前の土地利用と所有者、土地買収の価格と場所との関係など、用地確保の実態を分析する手がかりがほぼ整った。これらの史料の分析は現在、土地利用と地価について詳細なデータを提示する段階にまで至っている。疏水完成後の水力利用については、決算書類から把握できる利用者・水量・使用料と、土地利用・産業との関係を探る作業を進めている。都市イメージの生成や郊外住宅地との関わりについても史料が集まりつつある。22年度の作業では、疏水事務所所蔵史料の調査・収集をほぼ終了することができたことが大きな成果であった。併せてその他の史料についても、鍵となるものを多数発掘できたことで、研究の見通しが立ち枠組みを固めることが可能となった。複写した資料のデジタル・データベース化、図面資料の解読とリライトなどを進めることで、次年度以降、より多くの新知見が得られることが期待される。
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