本研究は、世界に誇る我国の重要な伝統的木造建造物を、炭素繊維材の高機能性を利用して補強・補修する方法を確立し、新たな保存修復法を構築することが目的である。そのための研究方法として、温度・湿度等の環境条件が木質材料の補強部劣化に及ぼす影響に関して、環境試験・促進耐候性試験にて分析を行なうものである。その結果を踏まえ、耐久性に優れた補強材料や補強方法を考案し、重要文化財等の解体修理の際に当初材再利用率を高める新たな手法を開発し、最終的には保存補修法の設計・施工指針の基本方針の策定を目指す。 本年度の研究として、温度・湿度の環境条件が炭素繊維複合材に及ぼす影響を調査するため、恒温室・湿熱室を用いた環境実験を行ない、長期的な環境履歴を試験室にて再現する実験を行った。事前に建築物の外装材の長期特性の評価に用いられる各種試験法・基準類の調査を実施し、試験方法を設定した。設定した条件で環境試験を実施した後、炭素繊維複合材の付着・曲げ強度を測定し、その強度低減状況から強度特性の変化等の基礎的特性を把握し、複合材としての耐久性の評価を行なった。 炭素繊維材に漆塗装を施した場合の漆塗面の変質状況に関しては、2年程度の短期間で耐候性が評価可能な屋外促進暴露試験(EMMAQUA)を行った。本試験により表面状態の色差・光沢などの長期的な変化を測定し、表面特性の分析を実施中である。
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