研究課題/領域番号 |
22560646
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
渡辺 道治 東海大学, 産業工学部, 教授 (70269108)
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キーワード | ギリシア劇場 / ローマ劇場 / 舞台建築 / 平面形式 / 水平通路 / 階段状通路 |
研究概要 |
平成23年度に実施した研究の具体的内容、その意義と重要性は以下の通りである。第1に現存遺構でその平面が判明する舞台建築部分の平面形式を大きく7つに分類し、それぞれの平面形式の地域的あるいは時代的な特徴を明らかにした。これによって、ギリシア・ローマ劇場の舞台建築においては、単に高くなった舞台形式と高くなった舞台でありながらなおかつ中心性を強調した形式の2タイプに大別でき、前者はギリシアやトルコにヘレニズム時代までに、後者は特に共和政時代のイタリアを中心に紀元前1世紀以降に地中海全体に広がっていった。この舞台建築の平面形式と前年度に行った客席の平面形式の分類を相互に比較することで、劇場全体の平面のタイプやそれぞれのタイプの形成されてきた過程が明らかになるはずである。次に前年度の客席の平面形式の分類の成果を踏まえ、客席の水平通路と階段状通路の配置の仕方についての分析を行った。これによってヘレニズム時代、ローマ時代と時代が新しくなるにつれて水平通路で客席が区分されることがより多く行われるようになり、また座席段数が10-15段位になると2層に、30段位になると3層に分かれる傾向が明らかとなった。次に階段状通路の配置の仕方を見ると、小アジアでは客席中央部に階段状通路を配置することは極力避けられていたことが明らかとなった。座席の傾斜角度を検討すると時代が新しくになるにつれ、その傾斜はギリシア、ヘレニズム時代はそれほど変化はないが、ローマ時代になるとより急な傾向になることが判明し、特に中東の劇場の座席はきわめて傾斜角度のきつい座席となっていたことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年経過し、客席と舞台建築の平面形式の分類とその検討がほぼ終了した。また研究成果として発表はしていないが、都市計画の観点から見た劇場の配置についての資料収集がほぼ終わりに近付いている。さらに舞台と客席の配置の幾何学的な分析についても研究が進みつつある。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の最終年度となるので、以下の3点が必要となる。ひとつは舞台建築、客席の平面形式を分類した結果を相互に比較、検討し、劇場全体の平面がどのように形成されてきたのかをまとめる。次に客席からの舞台の見え方についての検討を行うこと。これについては平面の観点からはすでに終了したので、断面の観点からの分析を必要としている。最後に既往研究との最終的な比較検討を行うことである。既往研究について再度より詳しく検討し、論文としてのまとめを行う予定である。
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