研究概要 |
強磁性を示すホイスラー合金の中には一方のスピン状態が金属的,他方が半導体的に振る舞うハーフメタルとよばれる電子構造を持つものが存在することが電子状態計算の結果から予見されている.ハーフメタルのフェルミ準位では片側のスピン状態の電子しか存在し得ないため,これが伝導特性にユニークな性質をもたらすと考えられている.そこで今年度は、スピントロニクス分野での応用が期待されているホイスラー合金Co_2MnAl_<1-X>Six、およびCo_2Mn_<1-Y>Fe_YSiの電気抵抗率のX、Y依存性を第一原理計算による評価を行った。研究方法としては,密度汎関数法による電子状態計算の手法を応用し,完全な規則構造では理想的なハーフメタルとなる。L2_1構造の場合、X=0,1、Y=0,1を除く組成の抵抗率は20(μΩcm)程度であり、Fe-CoやFe-Niなどの合金と同程度である。一方、B2とA2構造では100(μΩcm)程度で推移しており、Co_2MnSiにおける抵抗率の測定値と同程度の値が得られている。ここで注目すべきことは、Co_2MnAl_<1-X>Six領域において部分不規則構造であるB2構造の抵抗率が完全不規則構造であるA2のそれより大きいことである。これは、この組成領域のB2構造がハーフメタル性を維持し、片方のスピン状態にエネルギーギャップがあることを反映したものである。このB2構造の抵抗率は、Co_2MnAl_<1-X>SixからCo_2Mn_<1-Y>Fe_YSiの組成領域に入ると急激に低下するが、これはCo_2MnAl_<1-Y>Fe_YSi(Y>1)においてフェルミ準位がminority spin状態のバンド内に入りハーフメタル性が消失することを反映したものである。これに伴いA2構造とB2構造の抵抗率がY>1領域で逆転し、完全不規則構造であるA2構造の抵抗率が部分不規則構造であるB2構造の抵抗率より大きくなる。
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